Harpist 吉野直子 Naoko YoshinoHarpist 吉野直子 Naoko Yoshino

プレスインタビュー、コンサート評、CD評のいくつかをご紹介します。

OMF(セイジ・オザワ松本フェスティバル)公式ウェブサイト ~SKOメンバーインタビュー(2020年8月18日)

朝日新聞 2019年3月18日夕刊

CD評(ハープ・リサイタル4~武満・細川・吉松・ケージ・サティ GNY-704)

サティ、ホリガー、ケージに加えて、武満徹、細川俊夫、吉松隆も。1台のハープが文字通り、一つの物語をひもといてゆく瞬間に立ち会わせる。音と人間、自然と宇宙の多様な世界が表現され、心洗われるCDである。(諸石幸生)

レコード芸術 2019年4月号

CD評(ハープ・リサイタル4~武満・細川・吉松・ケージ・サティ GNY-704)

推薦:[略]周到に進められてきた名手・吉野の集大成的シリーズ。順にホリガー、細川俊夫、武満徹、ケージ、吉松隆、グレイス・ウィリアムズの作品が収められ、その合間をサティの《グノシエンヌ》3曲が埋めていくというアイディアだ。ホリガー《セクエンツィア》と細川《回帰II》の、楽器の常套手段に寄りかかりすぎることなく厳しい佇まいの音のが続いたあとにサティの音楽が聞こえてくると、耳がほっとする。それでも、ハープというのは制約の大きな楽器なので、どうしてもその和声と音の選択のしがらみのなかに引き込まれそうになるが、並べられた作品のなかでは、やはりテープとのライヴ・エレクトロニクスであった武満の《スタンザII》が冒頭から圧倒的に魅力的で、やや裸にされた現代手法の中でいまだに斬新に響く。吉野の演奏も、アルバム中央に置かれたこの武満で緊張の登り詰めを聴かせ、続くケージの初期作《ある風景の中で》で、ふたたび温和な奏法と表情に戻っていく。吉松作品の適度に乾いたロマン性は、ハープという楽器にマッチングがいいと思ってしまうのは、最後のウィリアムズの、こってりとロマンティックな《ヒラエス》にたどり着いたときのこと。サティよりわずか40歳年下のウェールズの作曲家の甘い香りは、サティに始まるアルバムをシンメトリカルに閉じる。(長木誠司)

推薦:自主レーベルのグラツィオーゾから年1枚のペースでリリースしている吉野直子の『ハープ・リサイタル』シリーズ。 独奏曲のみで構成し、広がりのある選曲を楽しませる。豊かなレパートリーと優れた音楽性、きちっと仕上げる技術力に感服する。4枚目は現代作曲家のきらりと光る曲目が軸になっていて、それらの間にサティの《グノシエンヌ》をちりばめて狂言回しの役割を与えた。どこかアンニュイなサティの楽想に揺られていると、突如、ホリガーの《セクエンツィア》が始まって、 不協和な楽想が耳に切り込んでくる。その緊張感はそのまま、 細川俊夫の《回帰II》へと続く。ここで《グノシエンヌ》第2番が聴こえてきて、ほっと一息つく感じになる。武満徹の《スタンザII》が全体の中心に置かれている。以前にも彼女自身の演奏でCD化されているが、他の作品とともに昨年、新たに録音された。金属質の音で始まったかと思うと、中間部では鳥のさえずりがきこえるテープの音響とあわせて、きりっとした演奏が展開される。音の濃淡から奥行きが生まれる。続くケージはサティに近い。耳をゆるゆると解きほぐす感覚だ。吉松隆の小品集は作曲が2006年で最も新しい。さらりとした抒情が全編に流れていて、しなやかなハーモニーと、ダンスっぽいリズムによる小気味よい楽想が入り混じる。グレイス・ウィリアムズの《ヒラエス》は吉松の作風とも違和感なくつながる。ごく短い曲ながら濃厚なロマンティシズムが漂う。(白石美雪)

レコード芸術 2018年4月号

CD評(ハープ・リサイタル3~バッハ・モーツァルト・シューベルト・ブラームス 他 GNY-703)

推薦:[略]あらたなレコーディング・シリーズの第3集はまた、ハープのディスクとしてはおそらく画期的な、ある深い意味合いを帯びたものとなった。すなわち、ここにはハープのためのオリジナル楽曲は遠ざけられて1曲も含まれず、代わりにバロック期、古典期、ロマン派時代を飾ったピアノのため、あるいは(1曲のみながら)ヴァイオリンのための名曲を、 "ハープ曲" として編曲・再生したものだけが収められたのである。時代的に最も古い曲はバッハの、言わずと知れた「ヴァイオリンの聖典」である、《無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番》よりの〈シャコンヌ〉。CD上ではこれが最後に置かれているのだが、吉野直子自編、現在ではヴァイオリン演奏でも珍しくなっているほどじっくりとしたテンポ(全曲で約15分をかける)をもって運ばれるこの名曲の、まさしく "ハープならでは" の粒立ちによる精緻な美しさから、聴きては本当に多くのことを考えさせられ、学ばされる。ほかの選曲[略]からも、また同様。[略]「味わい尽きぬアルバム」とは、こうしたもののことだ。(濱田滋郎)

推薦:[略]シューマンの〈タべに〉は遠くから鳴り響いてくるような趣がある。音は深みがあり、表現は力強い。《アラベスク》もすばらしい。弱音で弾き始めて音や表情、緩急を自在に変化させつつ、有機的な流れの中で全体像が姿を現わす。シューベルトの《即興曲》作品90の3は旋律と伴奏のバランスが見事で、その歌は実に味わいがある。モーツァルトのピアノ・ソナタK545の最初の印象はオルゴールのよう。第1楽章のタッチは力強く、リズムとテンポは引き締まっている。モーツァルトの《フルートとハープのための協奏曲》を想起させるが、こうして聴いているとこのソナタもハープのオリジナルではないかと錯覚させられる。まさに至芸。メンデルスゾーンの〈甘い思い出〉は柔らかな音色で聴き手に親しげに語り掛けてくる。興味深いのは〈紡ぎ歌〉。紡ぎ車の回転を模倣するパッセージはハープにぴったり。吉野自身の編曲による〈シャコンヌ〉も聴きどころ。多彩な音色で多声が見事に弾き分けられると同時に、静かな情熱が感動を呼ぶ。[略](那須田務)

朝日新聞 2017年2月13日夕刊

CD評(ハープ・リサイタル2~ソナタ、組曲と変奏曲 GNY-702)

世界的ハープ奏者によるリサイタル集第2弾。 [略] 20世紀の作曲家に焦点を当て、近代ハープ作品の魅力を解き放っている。香り高い音の調べの虜になる。美しくも力強い。(諸石幸生)

レコード芸術 2017年3月号

CD評(ハープ・リサイタル2~ソナタ、組曲と変奏曲 GNY-702)

推薦:ハープ界の第一人者、吉野直子の最新アルバムは、この楽器のためのオリジナル作品を集めたのみならず、5曲中ソナタが3曲、他も組曲および変奏曲と、大変充実した内容のものになった。 [略] 冒頭に置かれたブリテンの「組曲」は、いわゆるハープ的な美観を忘れぬまま音楽の本質的な深み、渋い奥行きを保つ優れた所産。タイユフェールのソナタは優しい愛嬌と恥じらいがちな抒情をおびてとてもフランス風。第2楽章レントがとりわけ心に残る。ヒンデミットも、この作曲家に対する通念よりはずっと親しみやすい曲想。同様のことは次のクルシェネクにも言えよう。サルゼードの変奏曲は演奏時間15分24秒に及ぶなか、さすがは名演奏家らしく楽器を識り抜いた妙味が生かされていておもしろい。 [略] アルバムを締め括るにふさわしい華麗な1曲で、大いに楽しめる。 [略](濱田滋郎)

推薦:[略] ハープのオリジナル曲、それも聴き応えのある作品が並ぶ。ブリテンの「組曲」の「序曲」は複雑な音遣いと旋法的なイントネーションが神秘の国へと誘う。「トッカータ」は弱音の爪弾きが美しく、無駄のない抑制された表現がすばらしい。「夜想曲」は精工に象られた美術品のよう。フランス六人組の紅一点タイユフェールのソナタも、古典的な外観に独自のフランス的なウィットと色彩に富んだ演奏。技術的な難易度が高いらしいが、そんなことは微塵も感じさせない。声部の弾き分けが巧みで、レントなどは二人で弾いているようだし、「無窮動」はリズムの律動感が快い。ヒンデミットでは音色と表現がさらに太くなる。フレーズの輪郭が明快でフォルテは本当に力強い。クルシェネクも然り。サルゼードの「古風な様式の主題による変奏曲」は抜粋ではなく完全版だ。親しみやすい旋律や華やかなパッセージなどハープを聴く醍醐味を満喫させてくれる。(那須田務)

音楽の友 2017年3月号

CD評(ハープ・リサイタル2~ソナタ、組曲と変奏曲 GNY-702)

[略] 第1集もよかったが、今回の第2集はさらに素晴らしい。それは、磨き抜かれたテクニックに加えて気品があり、それが聴き手をして耳をそばだたせてしまう。美しさにも力強さがあり、演奏家の成熟を実感させる。(諸石幸生)

音楽の友 2017年3月号

コンサート評(サントリー小ホール 2017年1月7日)

「デビュー30周年記念演奏第2回」は20世紀の4人の作曲家の7曲という意欲的なもの。吉野直子ならではの耽美的とも云える音の饗宴で、新年を飾るに相応しかった。
前半はブリテン、ヤナーチェク、ヒンデミットのハープオリジナルの曲。3人の中ではヒンデミット「ハープのためのソナタ」がよく、ザッハリッヒな作りが気負いなく響く。第3楽章は短いが一瞬ドビュッシ-《亜麻色の髪の乙女》の引用を想わせる断片が現れるなど面白い。
この3人の曲が、云わばピアノで下書きを書いたハープ音楽とすれば、後半のサルツェードの3曲は、ハーピストの曲だけあって真にハープで考えられた音楽。《古代様式の主題による変奏曲》は最も面白く聴けた。各変奏は実によく考えられた多彩なものだ。ハープを知悉した音楽だが、第11変奏の最初のフーガを見事に演じた吉野の冴えに感服。《シンティレーション(煌めき)》には弦の響きが群化した面白さがある。加えて幽けき響きの世界との対照を演出している。《バラード》はハープという楽器の可能性を、弦のみで美しく醸しだしたハープ音楽の粋で、吉野の際立った腕を伝えた。(佐野光司)

日本経済新聞 2016年3月8日夕刊

CD評(ハープ・リサイタル~その多彩な響きと音楽GNY-701)

世界的ハープ奏者が自主レーベルから発表したソロアルバム。[略]ハープの特色であるやわらかな音色をフルに生かし、まるでオーケストラ、弦楽四重奏のような色彩豊かな響きを生み出している。[略](岩)

レコード芸術 2016年2月号

CD評(ハープ・リサイタル~その多彩な響きと音楽 GNY-701)

[略]今回の1枚で特に注目すべきはルニエの《伝説》。[略]期待通りの実に良く考え抜かれた演奏だ。細かい音色の繊細な使い分けによって我々はルニエが曲頭に掲げたルコント・ド・リールの詩「妖精たち」が描いた暗い森の闇、不安、邪悪な妖精たちの踊りの不気味さ、呪われた騎士を襲った悲劇と死をしっかりと感じることができる。ほかにもグランジャニー《狂詩曲》とワトキンズ《火の踊り》のようなハーピストにとって重要なオリジナル作品も実演を重ね円熟した解釈で聴ける。これはハープ演奏史に残されることを意識した録音なのだ。[略](谷戸基岩)

レコード芸術 2016年4月号

CD評(ハープ・リサイタル~その多彩な響きと音楽 GNY-701)

推薦:[略]吉野直子は世界的技量を持つハーピストでありながら、レコーディング、とりわけ独奏の録音盤を、なぜか少ししか出して来なかった人である。従って、ここにようやく現われたソロ・アルバムは、まさしく待望のものと言えよう。プログラムはハープのオリジナル曲と、他ジャンルからの編曲物が相半ばしている。[略]ドビュッシー《月の光》はハープでも「定番」だが、モーツァルト《幻想曲 K307》やブラームス《間奏曲 作品118-2》をこの楽器で聴くのはめずらしい。とりわけブラームスは問いかけを繰り返す趣の主題が弦のつまびきにふさわしいせいか、絶佳の味わいが生み出される。モーツァルトも、少々余韻が鳴りすぎる感はあるものの、やはり美しい。オリジナル、編曲ものを問わず、吉野直子の、曲それぞれの"いのち"までをしっかりと把えた弾きぶりは、さすがのものがある。今や、芸境の極みに身を置くと言えよう。(濱田滋郎)

推薦:[略]どの曲も万全の技巧と入念に練り上げられた解釈が示される。吉野のハープは先頃当欄で試聴したメストルの筋肉質な力強い演奏と違って柔らかくてしなやか。《朝に》は主旋律と装節約パッセージがきれいに弾き分けられるのはもちろんのこと、洗練された気品がある。フォーレのオリジナルのハープ作品《塔の中の姫君》然り。複雑な和音の連結の曲ながら音楽の流れはいたって自然で王朝風の高責な趣がある。ブラームス晩年の《間奏曲 作品118-2》も晩秋の風に舞う黄金色の落ち葉を連想させる。モーツァルトの《幻想曲 K307》にも言えるが、どの表現も無駄がなく繊細な陰影に富み、生々しい情念の重さや大袈裟なところがない。ハープの多彩な表現が盛り込まれたワトキンズの《火の踊り》やカラフルな音色とスケールの大きなリストの《愛の夢》等、他にも聴きどころ多し。(那須田務)

モストリー・クラシック 2016年5月号

CD評(ハープ・リサイタル~その多彩な響きと音楽 GNY-701)

[略]聴き込むほどにハープの音色の多彩さが味わえ、声楽家のような親密な歌声からオーケストラのような壮大な響きまで幅広い世界が堪能できる。とりわけ「愛の夢」と「月の光」と「黙想」が、瞑想的で幻想的で神秘的な世界を繰り広げ、美しい絵巻物を見るよう。ハープの可能性を追求した意欲的な1枚である。(伊熊よし子)

朝日新聞 2015年12月21日夕刊

CD評(ハープ協奏曲集~アランフェス協奏曲 ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮オーヴェルニュ室内管弦楽団 AP-113)

世界的ハープ奏者による久々の録音。「アランフェス」は作曲者自らがハープ協奏曲に改訂した版によっており、実に自然で美しい。テデスコ、ドビュッシーなども収録。ハープによる万華鏡的な感銘に浸らせる。(諸石幸生)

朝日新聞記事

レコード芸術 2016年1月号

CD評(ハープ協奏曲集~アランフェス協奏曲 ロベルト・フォレス・ヴェセス指揮オーヴェルニュ室内管弦楽団 AP-113)

推薦:[略]聴きものはやはりドビュッシーの《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》だろう。静謐をきわめたこまやかな表現が何とも美しく、吉野ならではの繊細で精妙な魅力にとんでおり、いかにも美しく聴き映えがする。またトゥリーナの《主題と変奏》でも、吉野は美しく澄んだ響きをこまやかに生かしており、ここでも精妙な音彩が美しい。(歌崎和彦)

推薦:[略]20世紀前半の作品を集めた一枚。[略]アルバムの中心とも言うべきは、口ドリーゴの《アランフェス》。作曲者自身の編曲は、ギターの名曲の美質を生かしつつ、新たな角度からの光を当てて、さらに艶やかな色合いを与えるものだ。吉野のハープはその本質をしっかりととらえ、さらに彼女自身の豊かなバックグラウンドに支えられた個性の刻印をも、明確に音楽へと昇華させていく。カステルヌオーヴォ=テデスコでは、バランスの良い音楽創りのなかでも、とりわけ終楽章の生き生きとした表情は忘れ難い。さらに、ロドリーゴに影響を与えたと考えられるドビュッシーの2つの舞曲では、透明でしなやかな小宇宙が形成されている。そして締めくくりはトゥリーナの小品。伸びやかなハープの響きが弦楽と一体となり、しっかりとスベインに回帰してアルバムが閉じられる。「スパニッシュ」なこのディスクのためのバートナーとして、吉野が2013年のラ・フォル・ジュルネ以来共演を重ねて来たというベセスは理想的なチョイスと見える。スペインの風合いはもとより、勘所をしっかり押さえて手兵のアンサンブルをまとめ、吉野を支えている。(岡部真一郎)

2020年8月更新
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